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産学官民の立場からの教育論議

12/6、ホテルメトロポリタン池袋にて私塾界プレミアムセミナーが行われた。

月刊私塾界|全国私塾情報センター

 

産学官民のそれぞれの立場から、昨今の教育についての議論がなされた。

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第1部 トークセッション「これからの個別指導塾を考える」

【登壇者】

東原 俊哉 氏(プリンシパル) 株式会社アドバンテッジパートナーズ

常石 博之 氏(取締役副社長) 株式会社スプリックス

豊川 忠紀 氏(代表取締役) 株式会社創英コーポレーション

 

 

 

日本の個別指導塾を牽引する三社によるトークセッション。

個別指導塾の特徴であるのは、生徒一人一人のニーズに確実に応えること。

 

 

昨今の教育改革では様々なジャンルの塾が表れている。プログラミングに象徴されるSTEM教育に特化する塾、探究型の学びに特化する塾など、新たなニーズを掘り出して応えていく学習塾が増えている。

 

 

しかし、この三社の姿勢はとても現実的で堅実的だ。入塾してくる生徒は学校の授業についていけない生徒や、学校の授業では補えない入試学力の補強を求める生徒だ。

 

あくまで学校を補完するニーズに対応する。マーケットにはっきりと顕在化しているニーズにパーソナライズして応えるのが個別指導塾だ。あえて新しいニーズを掘り起こすことはしない。既存のニーズを追いかける形だ。

 

もちろん社内事業には新しいニーズに応える事業やサービスも展開しているが、メインは現在の課題を解決する、目の前の生徒に尽くすことである。

 

マーケティングの観点からも、新しいマーケット開拓やソリューションの提供は大きなリソースを必要とする。そのため、現在の顕在化さえれているニーズにサービスをフィットさせ、ほとんどのリソースを投下している。

 

 

 

第2部 パネルディスカッション「『未来の教室』が描き出すこれからの教育」

【モデレーター】

公益社団法人国学習塾協会 安藤 大作 氏(会長) 

【パネリスト】

経済産業省 浅野 大輔 氏(教育産業室 室長)

文部科学省 安彦 広斉 氏(初等中等教育局 視学官)

千代田区麹町中学校 工藤 勇一 氏(校長)

探究学舎 宝槻 泰伸 氏(代表)

 

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第1部では業界の同じ立場の方々によるディスカッションであったのに対し、第2部ではそれぞれ立場の異なる方々から「未来の教室」に関するディスカッションがなされた。それぞれの発言内容ごとに記載する。

 

 

 

千代田区麹町中学校 工藤 勇一 氏(校長)

 

麹町中学校では、今までの学校に当たり前のようにあった制度や文化を見直している。

 

定期テストなし

・宿題なし

・固定担任制なし

 

工藤氏は学校を医療現場に例える。医療現場では「チーム医療」として患者の容態を分析してそれに合わせて適切な専門スタッフが対応する。

 

固定のスタッフが全て対応するのではない、患者に応じた患者主体の対応だ。これを学校に当てはめて「固定担任制」を廃止した。生徒に合わせて面談者を決めていく。

 

教員がチームとなってクラス、学年の生徒情報を共有する。生徒も人であり、教員も人である。そのため相性の良い悪いは存在する。先生全員で生徒全員を見る、チームとしてみる、生徒に合わせて適切な指導や環境を提供する、生徒主体の教育の実現だ。

 

定期テストを廃止するのも、医療現場にはない「競争原理」をなくすためだ。医療と同じで、競争していては何かしらの無理が祟ってしまう。

 

また、カリキュラムも見直している。全員に対して学習指導要領のカリキュラムを全て教え込む必要はない。

 

全員に対して小学校1-6年までずっと漢字の書き取りは必要か?目が不自由な子どもに必要なことは?現代ではスマホやPCでの文字入力が主流なのでは?

 現行のカリキュラムは内容が多すぎる。その子に合わせて絞ることが必要。

 

この麹町中学校はまだ特異な方ではあるが、このように変革を起こす学校は増えてきている。

 

 

 

探究学舎 宝槻 泰伸 氏(代表)

 

一方、塾業界でもかつてとは異なるジャンルの塾が台頭してきている。

 

探究学舎はPBL型の授業で学習者の探究心を育成している。

子供の心に火を付ける「教育のディズニーランド」を目指している。

 

現在の学習塾が、受験勉強の対策に特化したものが多いのに対し、探究学舎は受験を意識しない学びを提供している。

 

マーケットもマイノリティーを狙わない。新時代に向けた教育改革に感度の高い、少数の「イノベーター」をターゲットとしていた。そして、現在ではキャズムを越え、マジョリティ層の人気を獲得している。

 

 

 

文部科学省 安彦 広斉 氏(初等中等教育局 視学官) 

 

安彦氏は、学習指導要領改訂の内容についても言及している。学習指導要領を目標カリキュラムとし、文部科学省としてどのように変革する社会に適応できる人材を育成するかを論じた。

 

経済産業省 浅野 大輔 氏(教育産業室 室長)

 

一方、浅野氏は学習指導要領の限界を示唆している。

かつては学習指導要領の内容を画一的な教科書で教え込んでいた学校だが、

これだけテクノロジーツールが発展してきた現代において、

何を使って学ぶか、教えるかにはこだわらない。どのように山の頂上に行くかは自由だ。

 

 

また浅野氏は塾の役割の変遷を強調する。

 

「学校、保護者フォロワーとしての塾の時代は終わった」

 

すでに顕在化している学校補完のニーズへの対応ではなく、市場を、新しいニーズを開拓していくことが求められるという。

 

 

このように、第1部とは違って第2部では、既存のマーケット、慣習、制度を見直す議論が盛んになされた。このセミナーでの議論から、産学官民が一体となって昨今の教育改革に取り組んでいる様相を、より具体的に垣間見ることができた。絵に描いた餅では終わらない、現実的で発展的な教育改革が進行している。