セールスフォース・ドットコムは、日本のスタートアップ企業を対象とした1億ドル(約110億円)の専用の投資枠を拡大する。
日本のクラウド市場がますます急拡大し、スタートアップが盛り上がるのは間違いありません。
そこで今回はスタートアップ企業にとって重要な方法論である「リーン・スタートアップ」についてまとめてみました。
リーン・スタートアップとは?
「リーン・スタートアップ」(lean startup)とは、2008年にアメリカの起業家エリック氏が提唱した、新規ビジネス創出における方法論や手法のことです。個人や企業が新しい事業を始める際に用いられます。
リーンスタートアップのリーン (Lean)とは、「無駄のない、スリムな」という意味です。リーン・スタートアップは、顧客にとってニーズにのない無価値な製品やサービスを開発してしまわないように、時間や労力の無駄をなくすための方法論です。
最低限のコストと短いサイクルで仮説検証を繰り返しながら、市場やユーザーのニーズを探り当てていきます。リソースが豊富にないスタートアップや新規事業において、無駄なく成功させるための重要なビジネス開発の手法です。
シリコンバレーで大きな支持を獲得しているリーン・スタートアップの手法は、起業家に限らず、企業内で新しい事業を立ち上げる際にも必要とされます。実際、アメリカでは「企業内起業家」に広く浸透しつつあり、変化の激しいビジネスに関わるすべての人にとって重要で、新しい指針となりうる考え方です。
リーン・キャンバスとは?
リーン・スタートアップの方法論の中心となるツールが「リーン・キャンバス」です。事業の規模が大きい場合には「ビジネスモデル・キャンバス」を用います。エリック氏はこれを元にしてリーン・キャンバスを作りました。
リーン・キャンバスは一枚の紙に書きます。下記のような構成です。
1. 顧客セグメント
企画しているサービスの顧客像を設定します。性別、年齢、志向、生活様態を詳細に記述します。幅広い顧客層を設定すると、後にキャンバスを埋めていく時に困難が生じます。チームの誰が見ても明確にイメージできるターゲットを設定します。
2. 課題
設定した顧客が抱えている課題を、原因も含めてピックアップします。課題は何個も思い浮かびますが、ピックアップするのは上位3つまで。3つに絞らないと本当に重要な課題が見えてきません。
3. 独自の価値
企画しているサービスの独自性を記述します。顧客に対するメッセージの形で記入しましょう。 9つの中で一番大切な要素です。
4. ソリューション
ピックアップした課題を解決するために、自社が提案する解決策を記述します。これでビジネスとしての方針が決まります。
5. チャネル
顧客に対して、どのようにアプローチしていくかのタッチポイントを書きます。インバウンド、アウトバウンドの複数のチャネルを考えておくと、様々な顧客へのアプローチが可能となります。
6. 収益の流れ
自社のサービスをどのように収益に変えていくかを記述します。提案するものが有形、無形のサービスかによって大きく異なり、顧客生涯価値などを考えておきます。
7. コスト構造
サービスを顧客に提供するために必要なコストを計算します。計画の段階では細かい数字を出すのは困難ですから、とりあえず大まかな数字を書いておきます。
8. 主要指標
事業のKPI(key performance indicator :重要業績事業指標)を設定します。新規顧客獲得数、顧客の回転率、リピート率、アクティブ率など様々ですが、そのビジネスモデルが最終ゴールをどのように設けるかによって決まります。
9. 競合優位性
自社が提供するサービスに対して、他社が真似できない優位性を設定しましょう。他社が後から参入出来ない圧倒的な優位性の要素を盛り込みます。有する顧客情報、信頼性、コミュニティ、SEOなどがあります。
リーンキャンバスのメリット
1. 高速性
1枚の紙に書きますので、30分もあれば書き終わります。また、何度も書き直しの修正を簡単に行うことができます。
2. 簡素性
9つの要素から構成されており、簡潔であり、本質がすぐに分かります。その簡素さ故に的確なフィードバックを得ることもできます。
3. 携帯性
持ち運びや共有が容易です。どこにでも貼っておくことができます。いつでもチーム内に共有することができます。
リーンキャンバス作成の注意点
最初に作成したリーンキャンバスは、度々の見直しが必要です。不確実性の高いマーケットでの戦いにおいては、戦略をピボットしながら開発していくことが求められます。B2B向けで始めたものの、途中からB2C向けのサービスだったということもあります。最初からブレないビジョンを構築しておきましょう。そして、リーンキャンバスの見直しは一人ではなく、チームで行いましょう。